タイトル | キリストを示したモーセ |
聖書 | ヨハネ5:45~47 |
説教者 | 木下淳夫師 |
今日は、「キリストを示したモーセ」というテーマです。
このテーマをご一緒に学ぶにあたり、モーセを知らないと今日の個所が理解できないので、はじめにモーセについてお話させていただき、それからイエス様がモーセはイエス様のことを律法に書き記したと語られたことを通して、私たちが信じるべきものは何かを再確認させていただきたいと願っています。
イスラエルの民は、アブラハムの時代に、神様からカナンを所有地として与えられました。ですから、アブラハム、また、その子孫であるイサク、ヤコブの時代まで、彼らはカナンに住んでいました。ところが、この時代に大きな飢饉が起こったためカナンで生活することができなくなりました。しかし、ヤコブとその家族は、神様の不思議な導きによってエジプトの宰相になっていたヤコブの11番目の息子ヨセフの計らいにより、エジプトに移住し、そこで十分な食料と自由をえて生活できるようになりました。ヤコブやヨセフが死んだ後も、イスラエルの人々はエジプトで生活し、その人数も非常に増えました。
ところが、時代が変わりイスラエルに敵意を持つファラオが現れました。ファラオはイスラエルの民が増え広がることを恐れ、男の子が産まれたら、その子をナイル川に捨てなければならないと命じました。また、イスラエルの人々を奴隷として、苦しめるようになりました。そのような苦しみの中で、イスラエルの民は神様に救いを求めました。神様は彼らの祈りを聴いてくださり、イスラエルをエジプトから救い出してくださいました。その時に、イスラエルのリーダーとして遣わされたのがモーセです。
モーセに率いられたイスラエルの民は、シナイ山で神様から律法をいただきました。モーセはイスラエルの民を代表して、神様と顔と顔を合わせて語り、神様の戒めを受け取りました。そして、神の民はどのように生きなければならないのかを学びました。そして、モーセは与えられた律法だけでなく、神様に示していただいた天地創造のことや、ノアの時代の大洪水、アブラハム、イサク、ヤコブに示してくださった神様の祝福、また、イスラエルの民が経験した出エジプト、その旅における神様の祝福と民の失敗など、さまざまな物語を書き記しました。
イエス様がおっしゃったモーセの書というのは、このようにしてモーセが書き記した書物のことです。そして、モーセを信じるというのは、モーセが書き記した書物を信じることです。そして、律法を守るだけではなく、そこに記された物語を通しても、示されている祝福と呪いを覚え、約束されたキリストを待ち望むことです。
ヨハネの福音書5章45~47節
45 わたしが、父の前にあなたがたを訴えようとしていると思ってはなりません。あなたがたを訴える者は、あなたがたが望みをおいているモーセです。
46 もしあなたがたがモーセを信じているのなら、わたしを信じたはずです。モーセが書いたのはわたしのことだからです。
47 しかし、あなたがたがモーセの書を信じないのであれば、どうしてわたしのことばを信じるでしょう。」
(新改訳第三版)
モーセが書いた書物には、天地を創造したことばなる神、幕屋を通して示された神と人との仲介者、さばき主であり、救い主であるキリストが、示されています。また、律法を通していのちを得る道が示されています。さらに、申命記18章15節には、「あなたの神、【主】は、あなたのうちから、あなたの同胞の中から、私のようなひとりの預言者をあなたのために起こされる。彼に聞き従わなければならない。」と、モーセのようなひとりの預言者であるキリスト・イエス様が遣わされ、イエス様に聞き従わなければならないと命じられています。
ユダヤ人の指導者たちは、モーセによってこのように教えられているにもかかわらず、そのキリストであるイエス様が目の前にいても、また、イエス様ご自身がことばと業によって、ご自身がキリストであると示されても、イエス様をキリストとは信じられませんでした。
ヨハネの福音書5章46節
もしあなたがたがモーセを信じているのなら、わたしを信じたはずです。モーセが書いたのはわたしのことだからです。
(新改訳第三版)
ユダヤ人の指導者たちは、モーセを信じると言いながら、実はモーセを通して示されている真理を見出すことはできませんでした。それは、自分勝手にモーセの律法を解釈したり、モーセを通して伝えられた神様の御業を真理であると受け入れようとしなかったからではないでしょうか。私たちも、イエス様を信じると言いながら、実は真実のイエス様ではなく、自分勝手に作り上げたイエス像を信じていることがないでしょうか。イエス様が私たちに伝えてくださった恵みのみことばを、自分で都合よく解釈し、神様の御心から離れた道を歩んでいることはないでしょうか。モーセは主なる神様から示されてイエス様のことを書物に書きました。それは、イエス様こそイスラエルの救い主だからです。もっと言うなら、アダムが犯した罪のために死に定められたすべての人を救い、永遠のいのちを与えてくださる全人類の救い主だからこそ、モーセは書物に書き記しました。イエス様はすべての人が待ち望んでいた救い主です。私たちは、自分勝手な思いでイエス様をゆがめることがないように注意しましょう。そして、聖書を通して示されるイエス様から目を離さず、イエス様の愛と恵みを素直に受け取り、忠実にイエス様に従っていきたいと願います。