2021年10月3日「交わりに必要な赦し」木下淳夫 師

タイトル交わりに必要な赦し
聖書コリント人への手紙手紙第二 2:5~11
説教者木下淳夫師

 今日は、「交わりに必要な赦し」というテーマです。

 人と人との関係は、相手を思いやって親切にすることが大切です。しかし、時には相手を傷つけてしまうこともあります。そのような時、悪いことをした人が素直に謝ることが大切です。それともう一点、大切なことは、謝罪を受けた人が相手を赦すことです。

 今日は、パウロが罪を戒めるように命じたことに従ったコリントの信徒に、次のステップとして、その人を赦すように勧めていることを学び、私たちも互いに赦しあい、良い交わりを作っていきたいと願っています。

コリント人への手紙第二 2章5〜8節

5 もしある人が悲しみのもとになったとすれば、その人は、私を悲しませたというよりも、ある程度—というのは言い過ぎにならないためですが—あなたがた全部を悲しませたのです。

6 その人にとっては、すでに多数の人から受けたあの処罰で十分ですから、

7 あなたがたは、むしろ、その人を赦し、慰めてあげなさい。そうしないと、その人はあまりにも深い悲しみに押しつぶされてしまうかもしれません。

8 そこで私は、その人に対する愛を確認することを、あなたがたに勧めます。

(新改訳第三版)

 コリントの教会では、一人の人が罪を犯してしまいました。その出来事は、パウロにとって、大きな悲しみになりました。また、その一人の罪は、パウロ一人を悲しませたのではなく、すべての兄弟姉妹を悲しませることになりました。ですから、パウロは先の手紙で罪を犯した人を戒め、悔い改めるように命じました。そして、罪を悲しみパウロに従った多くの信徒が、その人を処罰しました。大勢の人が処罰するのは、やりすぎではないかと思うかもしれませんが、一つの罪によって、すべての人を悲しませたのですから、多くの人がその罪を取り除くために、処罰に加わりました。それほど罪が及ぼす影響は大きいと言えます。

 しかし、パウロがコリントの人たちに、この新しい手紙を書き送ったのは、罪を処罰して終わりではなく、罪を犯した人を赦して、慰めるように命じるためでした。パウロは、罪を完全に取り除くことを求めましたが、罪を犯した人を取り除くことは考えていません。むしろ、罪を犯した人が悔い改めて、再び教会の交わりに加えられることを願っていました。「罪を憎んで人を憎まず」ということです。自分の罪を神様の御前に悔い改めても、兄弟姉妹から赦されることなく、交わりを絶たれるようなことがないように、パウロはその人に対する愛を確認するように勧めています。

コリント人への手紙第二 2章9〜11節

9 私が手紙を書いたのは、あなたがたがすべてのことにおいて従順であるかどうかをためすためであったのです。

10 もしあなたがたが人を赦すなら、私もその人を赦します。私が何かを赦したのなら、私の赦したことは、あなたがたのために、キリストの御前で赦したのです。

11 これは、私たちがサタンに欺かれないためです。私たちはサタンの策略を知らないわけではありません。

(新改訳第三版)

 先に書き送られた手紙で、パウロは罪を厳しく非難し、彼らのうちから罪を取り除くように命じていました。これは、「罪を取り除きなさい」というパウロの命令、さらに言うなら神様のご命令に、彼らが従うかというテストでした。それに対して、コリントの信徒は、ひとつの小さな罪が教会全体に悪影響を与えることの恐ろしさ、そして、罪を離れることの大切さを理解して、神様の御心を行うこと、みことばに従うことを選びました。

 そして、パウロは次のステップを教えています。それが、赦しです。信徒は誰でも、初めから赦す立場にはいません。今、どれほど立派な信徒になっていたとしても、初めは罪人であり、神様に赦していただかなければならない人でした。ですから、まだ神様の赦しをいただいていない人、神様に赦され神様の子どもにしていただいたけれども、依然としてこの世の影響を受けている信徒にとって、人を赦すということは経験したことがないチャレンジです。

 しかし、パウロは彼らが人を赦すなら、パウロもその人を赦す、また、パウロが赦したことは、キリストの御前で赦したとあります。悔い改めた人を赦すことは、すべての信徒がなすべきことであり、イエス様の御心です。イエス様は、すべての人が罪の赦しを得るために、十字架で命を捨ててくださいました。そのことからわかるように、人を赦すことは神様のみこころです。

 サタンは、兄弟姉妹がキリストの愛によって結ばれることを邪魔しようとします。偽りによって、兄弟姉妹が互いに罪を責めあい、愛を失わせようとします。そのようなサタンの策略にはまることがないように、パウロは赦しの大切さを説き、罪を悔い改めた人を慰め、交わりを回復するように命じています。

 人を赦すことは難しいかもしれません。自分に対して悪いことをした人に対して、「一生恨んでやる」という人はよく見かけますが、「あなたを赦します」と言える人はそうはいません。しかし、サタンは私たちが人を赦すことを妨げ、交わりを断ち切り、孤立させようという策略をもっていることを覚えなければなりません。

コロサイ人への手紙 3章13節

互いに忍び合い、だれかがほかの人に不満を抱くことがあっても、互いに赦し合いなさい。主があなたがたを赦してくださったように、あなたがたもそうしなさい。

(新改訳第三版)

 私たちも、普段の生活の中で、他の人に不満を抱くことがあるかもしれません。しかし、イエス様が十字架の苦しみを通して、私たちを赦してくださったことを覚え、互いに赦しあいましょう。その赦しの決心が、自分にも、また他の人にも平安と喜びを与えることになります。